去年、九州のど田舎から神奈川の郊外に引っ越してきた。お隣には我が家の長男と同じ歳の子どもがいて、家族ぐるみであっという間に仲良くなることができた。お互いに来年幼稚園なので、話題は自然とどこの幼稚園に入れるかということになる。お隣さんはすでに入園させる幼稚園を決めているようで、あまりその土地に詳しくない私達も、お隣さんと同じ幼稚園に入れることになった。
面接にも無事通り、入園式も無事済ませ、新生活にもようやく慣れた頃、同じクラスのママ友たちとランチをすることになった。お隣さんによると、毎年恒例行事なのだそうだ。私はてっきりガストかココスでランチするのかと思っていたら、何だか舌を噛みそうな名前のイタリアンのお店が会場なのだという。お隣さん曰く「パスタのおいしいお店」なんだそうだ。そんなお店、独身の時以来なのでワクワクしてしまう。ところが店に着いた私は驚いた。ママ友たちがまるで入学式の時のような恰好をしていたからだ。念のためちょっとおしゃれをしてきたので何とか浮かずには済んだけれど、Tシャツにジーンズにしなくて本当によかったと思った。そしてランチ会が始まり、おしゃべりが進むうちに私は大変なことに気づいた。息子が通っている幼稚園、どうやらこの辺りでは名門の幼稚園らしく、みんなお金持ちらしいのだ。話題もベンツだのフェラガモだのバーキンだの、高級品についてばかりだ。どうしてこんな幼稚園に私の息子が受かってしまったのだろう…。
それ以来、一か月に一度のペースでママ友の会が行われることになっている。そして今日のママ友の会。お題は「自宅の金庫について」らしいが、我が家には金庫なんて存在しない。「お宅はどうなの?」と聞かれてはぐらかすのももう限界に近付いてきた。いっそのこと、我が家は一般人であるということをカミングアウトしてしまおうか、2000円のパスタをくるくる巻きながら悩む私だった。